当社代表取締役会長の原田直純、東京大学大学院医学系研究科 国際保健学専攻 国際生物医科学講座のMOI MENG LING教授、京都大学大学院医学研究科 免疫細胞生物学の秋吉一成特任教授、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 腫瘍医学分野の池田裕明教授、愛知県がんセンター(研究所) 腫瘍免疫制御TR分野の村岡大輔ユニット長らによる研究グループは、今回、新型コロナウイルスに対する次世代ワクチンを新たに創製しました(図1)。本ワクチンは当社の多糖ナノ粒子「プルランナノゲル(以下PNP)」を免疫系指向性の薬剤送達システムとして採用し、新型コロナウイルスのスパイク蛋白の断片をワクチン抗原としています。
マウスを用いた新型コロナウイルスの感染試験では、PNPワクチンの事前投与により体内のウイルス量が有意に低下し、ウイルス感染に対して全例が生存しました(図2)。これに対しPNPを用いないワクチンでは、3割近くのマウスがウイルス感染で死亡しました。PNPワクチンの優れた感染防御効果は、PNPがリンパ節内の重要な抗原提示細胞であるマクロファージに受容体依存的にワクチン抗原を送達してキラーT細胞に対する抗原提示を促進することで、ウイルス感染に有効に対応できる良質なキラーT細胞を特に誘導するという作用機序に依ります。
以上の成果は、リンパ節内のマクロファージへのワクチン送達により良質なキラーT細胞を積極的に誘導するという新しいワクチン戦略の可能性を示し、またPNPがこれを実現する理想的な薬剤送達システムであることを示しています。我が国独自の本技術は今後、他の病原性ウイルス、特に将来のパンデミックに対する次世代ワクチン技術として応用展開されると期待されます。本技術のmRNAワクチンへの応用研究も鋭意推進されています。
本成果はワクチン学に関する国際学術専門誌「npj Vaccines」に下記の題名で2024年9月18日付で掲載されました。PDF